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 映画「ROUTE58」の祐輔役、黒田倫弘です。
 自分で言うと相当いやらしいけど、僕は顔とか体型とか見た目で、「役者やった方がいいんじゃないの?」と言われたことが何度もある。ふざけんな!俺は歌いたいんだ。そう思ってはねつけながらも、傷付いていた。
 そんな自分が映画の話に初めてのったのは、去年公開された「月のあかり」だ。「スリルバカンス」のビデオクリップで、海の中でギターを振り回してる僕をみて声をかけてくれたと言っていた。女性をナンパしては、応じられると「こんな淫売じゃだめだ」と殺してしまうひでー奴が僕の役。それを生臭くなく、破壊の象徴として「ガキ」として演れる人間を探してたらしい。きっと役者にはない、僕の下手な台詞まわしと、ステージのごとく舞う動きが、「ガキ」を成立させたんだろう。
 一方、僕がそこで得たもの。歌うこと以外の「表現する」に触れることで、自分がなぜ、何を歌うんだということの輪郭がはっきりしたということ。それと、これは大きな声ではいえないけど、歌以外の仕事に没入することで、音楽から離れられること。でも、この経験はすごく大きかった。寝ても覚めても音楽生活。ストレスがたまるからリフレッシュしなければ、というネガティブな感じではないけれど、自分から音楽を剥がすことができない。音楽から離れ、そして音楽へ戻る瞬間の感覚は、この仕事をしなければ得られなかっただろう。
 そして「ROUTE58」と「ROUTE58 ver.zero」という映画で僕が演った祐輔は、過去があり、沖縄に移り住み、気の合う仲間と店をやり、仲間の一人に恋をし、やぶれ、自殺しちまう役。「失恋して自殺するなんて」といいつつも、「黒田くんをイメージして書いた役」に、役者としての技術をもたない僕は、「祐輔」になりきった。撮影の間、僕は仲間を愛し、恋をし、やぶれて死にたくなった。
 人の想像力っていうのはすごいね。違う人間になれるんだ。
 僕は、何日かぶりに黒田倫弘にもどり、時々頭をもたげる「祐輔」にとまどいながら、こいつが俺の中にいるうちに、と、曲を書いてみた。僕の中に住んだ祐輔の記念碑のつもりで。曲もサウンドも詞も、どこかこれまでの僕なら生み出さなかったものになった。「蒼寂」という曲になって、7月にシングルになる。
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